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2020年11月 5日 (木)

プラごみ問題とアメリカ大統領選挙

プラスチック汚染からの脱却法と大統領選挙

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NY市内のスーパーマーケットのごみ箱(撮影:2019年8月16日)

最終的な結果が明らかになるまで、もう少し時間がかかりそうなアメリカ大統領選挙です。今回の選挙では、気候変動対策を始め、環境政策に対する両候補の政策には大きな違いがありますが、プラスチックごみ問題についてもそれは同じです。

ネット上には、大統領選挙におけるプラスチック汚染への姿勢を比較した記事もいろいろと見つけることができます。たとえば、

では、両候補だけではなく、緑の党とリバタリアン党の候補の政策についてもわかりやすく解説しています。また、日本語のウェブサイトでは、ナショナルジオグラフィック日本版での解説が、環境政策全般について両候補の違いを分かりやすく解説しています。

さて、日本ではあまり報じられていませんが、両候補の姿勢に大きな違いが予想されるのが、Break Free From Plastic Pollution Act(プラスチック汚染からの脱却法、とでも訳すといいでしょうか)への対応です。

今年2月11日に、民主党のAlan Lowenthal議員とTom Udall議員によって連邦議会に提出されたこの法案は、成立すればEUや中国をしのぐ、現時点では世界でもっとも進んだ(そして厳しい)プラスチック汚染対策となる可能性があります。

そして、トランプ氏、バイデン氏のどちらが大統領になるのか、によってこの法案の命運も大きく変わると考えられています。

 

プラスチック汚染からの脱却法のポイント

  1. 拡大生産者責任の導入
  2. 全国での飲料容器へのデポジット制度の導入
  3. 使い捨てプラスチック製品の段階的な廃止
  4. レジ袋有料化
  5. リサイクル素材の使用義務化
  6. リサイクルと堆肥化の促進
  7. 電子タバコを含むタバコフィルターや漁具の影響評価と対策の立案
  8. 廃プラスチックの発展途上国への輸出禁止
  9. 地方政府によるより厳しい規制政策の保護
  10. プラスチック生産施設の新規建設の一時停止と影響評価の実施

出所:原田禎夫(2020)「世界で広がる脱プラスチックの動き」生活協同組合研究, 2020年9月号,Vol.536, pp.5-13.

 

この法案では、2022年から様々な使い捨てプラスチック製品を段階的に規制するだけではなく、全ての素材を対象として拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility: EPR)の導入を求めるものとなっています。

また,容器包装類や食器類だけではなく、現時点では他国ではまだ包括的な対策が講じられてこなかったタバコや漁具の遺棄に関しても、その影響評価と対策の立案に取り組むとされています。

さらに、アメリカではシェールガス革命によって天然ガスの供給量が増加したことで、それを原料としたエチレン生産も拡大し、各地で大型のエタンクラッカープラント(*)の建設が計画されています。これは、安価なプラスチック製品の国内生産の急増にもつながることもあり、新規建設や拡張計画の一時停止を求めるとともに、環境悪化を招かないよう大気汚染防止法や水質保全法の改正も求めています。

* エタンクラッカー:天然ガスに含まれるエタンを原料としてエチレンなどの化学材料を生産する装置のこと。

特に、エタンクラッカープラントへの対応は、まさに両候補の、そして民主党と共和党の姿勢が大きく異なる点でもあり、トランプ氏は「地域経済を破壊する!」と訴えて少なくない支持を得てきた一因でもあります。

しかし、民主党の大統領候補であるバイデン氏が当選した場合、この法案にも署名するとみられています。

 

アメリカの環境政策と地方政府

ところで、環境政策に後ろ向き、と考えられがちなアメリカですが、自動車の排ガス規制が有名ですが、州政府や自治体レベルでは、むしろ世界的に見ても厳しい規制に取り組んでいる例も少なくありません。

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ハワイのスーパーでは、紙袋が当たり前です。(撮影:2018年5月27日)

たとえば、ハワイ州では2015年にホノルル市で条例が成立したことで、全米で最初にプラスチック製レジ袋の提供が州全体で禁止された州となりました。今年1月1日からは、生分解性プラスチック製レジ袋も提供が禁止されています。

また、世界最大の都市、ニューヨーク市では2020年1月1日から発泡スチロール製トレイが使用禁止となり、レストランやカフェ、屋台でのテイクアウトメニューは堆肥化可能な紙容器で提供されています。違反した場合は、日本円で最高10万円の罰金となっています。

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紙製食器で提供される屋台のメニュー(撮影:2019年8月16日)

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発泡スチロール製トレイの禁止について報じる日本語情報誌「NYジャピオン」(撮影:2019年8月30日)

また、ニューヨーク州でも2019年1月1日からプラスチック製レジ袋の提供を禁止しており、今年からは州全体で発泡スチロール製容器の提供も禁止されました。

ニューヨーク市での発泡スチロール製トレイの使用禁止は、実は小学校の子供たちの運動から始まりました。その様子が、「マイクロプラスチックストーリー ぼくらが作る2050年」という素敵な映画になっています。ぜひご覧ください!(映画の中では、エタンクラッカープラント問題についてもわかりやすく解説されています)

トランプ政権下でも、海洋プラスチック問題に取り組む法律「Save Our Seas(SOS)2.0 Act」が全会一致で可決・成立し、プラスチック・イノベーション・チャレンジというプログラムも始まっています。ただ、このプログラムはリサイクルの推進が中心で、根本的なプラスチックごみの発生抑制に踏み込んだものではありませんでした。

 

日本もこのままでいいのか?

日本も、まるでアメリカに歩調を合わせるかのような、リサイクル中心の取組にとどまってきました。こうした点について、環境NGOは共同で「政府のプラごみ問題施策方針へのNGO共同提言 -代替品や熱回収より「総量削減・リユース」を-」を提出しています。

アメリカで政権交代が実現した場合、脱炭素社会、そして脱プラスチック社会に向けた世界の流れも大きく動くことは間違いないでしょう。日本が果たしてこのままでいいのか、私たちも問われています。

 

では、また!

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