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2020年7月31日 (金)

ポイ捨てだけが悪いのか?

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最近はマスクなどコロナごみのポイ捨ても多いですね。

いよいよ明日(8/1)、私の住む亀岡市でも「ポイ捨て禁止条例」が施行されます。プラごみゼロに取り組む亀岡市で、レジ袋禁止のようにある意味事業者のみなさんに制約を課すのであれば、海や川の大きな原因になっているポイ捨ても罰しないといけないのでは?ということで市議会で議員提案で成立した条例です。

その背景には、ごみのリサイクル率12年連続全国一の鹿児島県大木町を市議のみなさんが視察された折に、ポイ捨て禁止条例がまちづくりに大きな成果を挙げてきた、ということを学んでこられて「議員提案で条例を作ろう!」となったとお聞きしています。

条例の制定にあたっては、私が代表理事をつとめているプロジェクト保津川でも、条例の制定に向けた意見書を提出しました。

この条例では、もちろんポイ捨てを罰する(過料を徴収する)ということも大切ですが、それと同時にポイ捨てさせない町づくりを目指すべきではないかということで、自販機横への回収ボックスの設置の義務化などを要望し、条例にもそのことを盛り込んでいただきました。

 

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花火大会の後のごみはどこでも大きな問題に。

 

さて、7月1日から始まったレジ袋の有料化ですが、「レジ袋は悪くない、ポイ捨てするヤツが悪い!」という議論も少なくありません。そこで今回はこの「ポイ捨て」問題とプラごみ対策について考えてみたいと思います。

お断りしておきますが、決して「ポイ捨て」を擁護するわけではありませんので悪しからず(苦笑)

 

なぜ、ポイ捨てを取り締まるだけでは不十分なのでしょうか?それは簡単なことで、すべてのポイ捨てを取り締まることは不可能だからです。

 

広範囲に散乱するポイ捨てごみを、最も低い費用で回収できるのは誰でしょう?

それは言うまでもなく、ポイ捨てした人自身です。

その次に低い費用で回収できるのは、ポイ捨てされたごみを見つけた人ですよね。

そしてこうした人々がごみを拾い、市町村などが引き受け、税金を使って処分しています。

 

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保津川でも雨のあとはあちこちにレジ袋の花が咲きます。

 

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大雨のあとは、頭上のはるか上にレジ袋などシート系のごみが引っ掛かります。

 

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保津川下りの船頭さんやラフティングのインストラクターのみなさんが、一つ一つ、手で回収してくださっています。

 

いうまでもなく、レジ袋やペットボトルなどのプラごみのポイ捨てはその回収費用がかかるだけではなく、散乱したごみによる景観の悪化や、さらに生態系への悪影響といった負の外部性をもたらします(外部性についてはこちらを参照)。

しかし、こうした費用は消費者が直接負担するわけでもないため、「タダ」と錯覚され、プラスチック製品は社会的に最適な水準を超えて利用され、大きな外部費用を発生させてしまいます。

 

では、どうすればポイ捨てを防ぐことができるでしょうか?

そのためには、ポイ捨てのようなごみの不適切な処理に対して、監視をすればいいかもしれません。

でも、その監視費用は天文学的な額になるでしょうし、ポイ捨てをした人全員に罰金を科すことは事実上不可能でしょう。

 

レジ袋の有料化のように、一定の額を上乗せする方法どうでしょう?

これも、これまでに議論してきたように、ポイ捨てが社会に及ぼす費用に見合った額を販売価格に上乗せできればいいですが、広範囲にわたって不特定多数の人によって利用される使い捨てプラスチック製品に正確にその額を上乗せすることは不可能です。

モノによっては、別の解決手法もあるのですが、それはまた機会を改めてご紹介しますね。

 

そして、レジ袋そのものがもつ環境リスクについても考えないといけません。

レジ袋は石油から出来ています。きちんとごみとして出されたとしても、燃やしてしまえばCO2の発生源にもなり、気候変動を防ぐという観点からも望ましくありません(日本でもプラスチックごみはほとんど焼却処分されています)。

レジ袋の原材料のポリエチレンは、石油精製の際にできるナフサから作られているのでエコだ、という主張もありますが、そもそも世界が脱石油に向かう中ではあまり意味のある主張ではないでしょう(そして日本はポリエチレンはすでに輸入超です)。

 

さらに、レジ袋の有毒性にも触れておく必要があります。

 

それは、DEHP(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル)という化学物質の存在です。DEHPは可塑剤、つまり柔らかくするために添加されています。

東京農工大学の高田秀重先生らのグループの調査によると、一般的に町中で買うことのできるプラスチック製品や海岸に流れ着いたプラスチック製品を調べたところ、ペットボトルのフタ、レジ袋、食品容器のDEHPの濃度が特に高かったということです。中でも特にレジ袋が高い結果になり、他のプラスチックの10倍多く含まれていました(図1)。

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図1 購入製品および海岸漂着プラスチック製品中のフタル酸エステル濃度

出所:環境省 環境研究総合推進費「海洋プラスチックごみ及びその含有化学物質による生態影響評価」(SII-2-2)中間研究成果報告書



このDEHPのについては、メーカーで作る業界団体は危険性はない、という立場です。


Q1. DEHPは危険な物質ですか?

DEHPはその有害性がこれまで世界で最もよく調査されてきた物質であり、医療用途を含め広く使用されてきましたが、ヒトに健康問題を引き起こした事例はありません。
各国の公的なリスク評価書(EU、米国、日本)では現行使用でのリスクは認められず、現行を超える規制は必要ない、と結論付けられています。
安全性の目安となる一つの具体例;ラットを用いた経口投与試験でのLD50値(半数致死量)は30~34g/体重kgであり、その値は食塩(8~10)や砂糖(8~12)より大きく、急性毒性は極めて低いです。また、皮膚の吸収毒性や、眼や皮膚に対する刺激性も極めて低く、危険な物質ではありません。

出典:可塑剤工業会ウェブサイト(最終アクセス:2020/7/31)

 

ですが、ネズミ類を用いた動物実験で大量に投与した際に毒性が認められた、ということで、以前から、DEHPは日米欧各国で、玩具などへの使用は禁止されてきました。現状では、ヒトへの影響は不明な部分も多いということで、「予防原則」にもとづいて規制されています。

 


予防原則

欧米を中心に取り入れらてきている概念で、化学物質や遺伝子組換えなどの新技術などに対して、人の健康や環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす恐れがある場合、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも、規制措置を可能にする制度や考え方のこと。

(中略)

1992年の国連環境開発会議(UNCED)リオ宣言は、原則15で予防原則について以下のように記している。「環境を保護するため、予防的方策(Precautionary Approach)は、各国により、その能力に応じて広く適用されなければならない。深刻な、あるいは不可逆的な被害のおそれがある場合には、完全な科学的確実性の欠如が、環境悪化を防止するための費用対効果の大きい対策を延期する理由として使われてはならない」。

これは、地球温暖化対策などで、科学的な不確実性を口実に対策を拒否または遅らせる動きの牽制とする意味合いもある。(2015年2月確認)

出典:EIC環境ネット環境用語集(最終アクセス:2020/7/31)

 

EUではDEHPは「高懸念物質」の一つに指定され、2019年7月22日より電子・電気機器における特定有害物質の使用制限に関する改正RoHS指令(RoHS2.0)により、使用禁止物質に指定されました。

また、 人々の健康や環境保護、欧州の科学産業競争力の維持向上を目的にした化学物質の登録・評価・認可・制限に関する法令であるREACH規則でも、一部例外はあるものの今年7月7日以降、市場で販売されるすべての製品で使用が制限されています(例外あり)。

 

もちろん、レジ袋を食べてしまう人はいないでしょう。

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亀岡市内からたった10数km下った保津峡でも、レジ袋はすでに劣化してボロボロに。

 

でも、薄くてもろいレジ袋は、簡単にマイクロプラスチックとなってしまいます。それが意図してポイ捨てされたものなのか、それとも風に飛ばされたというように意図せずして流出したものかを問わずに、です。

マイクロプラスチックとなったレジ袋は、プランクトンが食べ、それを魚が食べ、そして最後には私たち人類がその魚を食べます。実際に、こうしたプラスチックに含まれる有害物質が、海鳥の体内に移行して蓄積しているという研究成果も明らかになっています(Tanaka et al. 2020)。

 

ポイ捨ては悪い。でも、レジ袋そのものも悪い。

だから世界の多くの国や自治体が、有料化、そして使用禁止へと舵を切っているのです。

 

レジ袋はじめ、プラごみ問題をポイ捨てだけに原因を求め、自己責任の問題としてはいけないのか?、今回は化学的なことも含めて解説しましたが、次回は費用負担の面からも考えてみたいと思います。

 

では、また!

 

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