« 川は、誰のもの? | トップページ | 福岡で、考えた »

2012年1月23日 (月)

救えた小さな命、守れなかったすみか

Img_1123

昨日22日、亀岡市篠町内を流れる「牧田川」という小さな川で、生き物の救出作戦が行われました。なんとも理不尽な河川改修事業で、生き物たちの貴重な宝庫が失われてしまう、それを何とかしたいと思って呼びかけたところ、たくさんの方にお手伝いいただき、お魚たちの引っ越し大作戦が実現しました。

Img_1126

ことの経緯は先の記事でも書いた通り。治水安全度の向上と、利水の確保を目的に行われる河川改修で、豊かな小川がコンクリ三面張りになってしまう、ということでした。なんとか川を守れないか、いろいろ協議を重ねてきましたがそこは大人の事情というのが複雑に絡み合い、それではせめて魚が行き来できるように、また今いる魚はとりあえずかもしれないけれど引っ越しさせるように、と要望し、今回の救出作戦が実現しました。

もうこのプロセスだけでも、思い出すだけでも腹立たしいし、自分の力のなさを痛感する、そんなお話しが一杯なんですけどね(涙目)

Dsc01808

そんな中でも、地元の自治会の役員さんたち、市職員さんたち、NPOのみなさん、そして国交省の職員さんたちの色々な助言や力添えをいただきました。今後のこの地域の川づくりに、大きな宝になったかもしれません。

そして、救出作戦。人手が足りん!ということで、急きょ、このブログで告知し、それをTwitterとfacebookでも紹介したところ、あっというまにたくさんのリツイートやシェアをしていただきました。そして、助っ人も何人も。結果、20人ほどの方に今日はお集まりいただきました。

アラブの春、じゃないけど、これはもう、小さな革命ですよ。

こんな田舎町の、こんな小さな川の「大作戦」が、この町だけではなく、全国のみなさんに情報発信される。励ましの言葉もたくさん頂戴する。そして、実際に助っ人にまで来てくださる。もしかしたら、私自身がソーシャル・メディアの力を、初めて実感した出来事かもしれません。本当に本当に、みなさん、ありがとうございます。

Img_1137

今日は日曜日、でも工事の作業員の方もお越し下さって、朝からポンプで水を抜いて、魚を取りやすいようにしてくださいました。道具の準備や、いろいろ片付けなど、裏方として地味な作業を手伝ってくださり感謝。

ただ、干上がった川には、当然逃げ遅れた魚もいます。少し石をひっくり返すと、ヨシノボリが隠れていたりします。そういうのも一匹一匹、助けていきます。優しいな~、みんな。

それでもね、なんでここをコンクリ張りにせなあかんのか、いくら考えてもやっぱり納得いかないのだけれど。

Img_1141

大きなドンコ。肉食性のハゼです。

この魚がいる、とういことは、この小川が非常に豊かな生態系を持つ、ということの証左。言い換えると、餌となる小魚などの減少は大打撃となります。また純淡水性で一生の行動範囲が狭く、他のハゼ類のように海から遡上するということもないため、環境の激変は地域個体群に深刻な影響を与えます。つまり、工事が入ると、もうダメ。

カワムツ、これはもう500~600匹はいたでしょうか。注目すべきは、大きな成魚もいたこと。つまり、大雨の増水時などに上流から流されてきたのではなく、この場所で繁殖をしているということです。

Dsc01827

作業終了後、移送する前に、亀岡市地球環境こども村課の専門家の方より、ちょっとだけ生き物説明をしていただきました。

カワムツ  約500~600匹
ドンコ 20匹
ヨシノボリ類 約50匹
タモロコ
タナゴ
カワニナ→ゲンジボタルのエサ
ヒメタニシ→ヘイケボタルのエサ
マルタニシ
シジミ
アメリカザリガニ
サワガニ
ミナミヌマエビ
カワリヌマエビ
ヤゴ類 → 珍しいものではヘビトンボのヤゴ
トビケラ類 → 珍しいものではニッポンヒゲナガトビカワケラ

残念なのは、昔はここにいたはずのタカハヤやドジョウ類が一匹もいなかったこと。やっぱり、宅地開発などの影響は受けているんですね。

Img_1148

さて、魚たちは軽トラに乗せて、別の場所に移送します。こぼれないように、荷台に乗って、しっかり押さえます(結構、大変、笑)

Dsc01828

そして、別の場所に放流しました。

だけど、本当はこんなことをしただけでは不十分なのは百も承知です。こんなに小さな川。そこにどれだけの生き物が住めるか、という環境容量はたかが知れています。つまり、別の場所から移したところで、十分なエサがなければ、結局は一時しのぎでしかないわけです。

それでも、人知れず消えていただろう何百もの小さな命を、とりあえずは救えたことで良しとしなければいけないのが残念。たくさんの小さな命を救えたかもしれないけれど、何百もの命を育んできた川は守れない。複雑な気持ちです。

大きな収穫は、何とかしようよ、というたくさんの方にお集まりいただけたこと。川は誰のものなのか、学者のはしくれとして、じっくりと世に問うていきたいと、改めて思いました。最後になりましたが、みなさん、ありがとうございました。

|

« 川は、誰のもの? | トップページ | 福岡で、考えた »

川の話」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。