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2011年5月 4日 (水)

「いまどき京都職人カタログ ~京都に住んで京都で働こう」

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千年の都、京都。京都には、気の遠くなるような歴史と伝統をもつ、興味深いたくさんの「仕事」が数多く存在します。そんな京都の歴史と伝統、独自性を生かした仕事に携わる“職人”を紹介する新しい京都ガイドブック「いまどき京都職人カタログ」が出版されました。

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今回、本に収められているのは40の仕事。「京都府民だより」の人気コーナー「京都職人仕事百科」をもとに再編集された、大変興味深いお仕事ばかりです。

そんなお仕事のひとつに、保津川下りの船頭さんとして、プロジェクト保津川で一緒に副代表を務めている豊田知八さんが登場されています。以前に、京都府の広報課の方々とお仕事をご一緒したことが縁で実現した取材、実はその時に私も同席させてもらっていろいろと興味深いお話しを伺いました。

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撮影のときは、こんな貴重なショットも。本の中で紹介されているように、実は豊田さんの弟さんも船頭をされているのですが、「兄弟船」よろしく、兄が弟に指導する?という設定のシーンも撮影されたり(残念ながらボツになりましたが)。

レフ板を持つのは、府の職員さん。私もお手伝いさせてもらいましたが、被写体の豊田さんは「まぶしい!暑い!」と、文字通り汗をかかれていたのも楽しい思い出です。

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右側の黄色いセーターを着た方が、著者の黒田正子さん。

黒田さんはいわゆる「京都本」を何冊も手掛けておられるライターさんですが、保津川下りの知られざる歴史には「知らなかった~!」を連発されていました。

この本には、舞妓さんや装束司、能面師といったこれぞ京都、というお仕事から、理科室でおなじみ人体模型の製作者(実は人体模型はほとんどすべてが京都製だそうです!)、時代的の殺陣師、アニメ監督まで、いろいろなお仕事が収められています。

この本は、サブタイトルに「京都に住んで京都で働こう!」とあるように、これから仕事に就こうとする若い人に、都会的な、一斉の就職活動で就く仕事ばかりではなく、長い歴史の中で、代々受け継がれてきた伝統産業や地場産業に焦点を当て、その仕事で生み育てられる‘職人’という生き方を紹介しています。

たとえば豊田さんの「船頭」のコーナーでも

  • 2年目の新人から新人も一事業主として立場は同じです。
  • 就労単価は月ごとにかわります
  • 繁忙期には最高4回出船することも。ただしシーズンオフは待機しながら順番が来ない日もあります。
  • 乗船だけでなく、船や航路の保守点検ほか保津川下りの伝統継承のためのさまざまな業務、活動もあります。

と、およそ現代の企業での働き方からは想像もつかないような文言も並んでいます。

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私のゼミでも、幾度となく豊田さんはじめ、保津川下りの船頭さんたちと一緒に川の漂着ごみの調査に出かけます。もちろん、調査そのものが一番の目的ですが、それだけではなく、船頭さんという、都会の生活の中ではまず出会うことのない職人さんたちと一日をともにする中で、はたらき方って一つじゃないということを肌で感じてもらえたら、と思っています。

よく、「就きたい仕事がない」「自分のやりたいことが何かわからない」という学生さんがいます。「手に職をつけるために資格を取りたい」という学生さんの相談もよく受けます。

職人さんになるかどうかは別にして、学校を出てそのまま会社に入る、それは本当は“当たり前”とは限らない、ということをこの本を通じて知ってもらえれば、と、大学で教育に携わる者の1人として思います。

ぜひ、高校生や大学生のみなさんに読んで欲しい1冊の本です。

☆「いまどき京都職人カタログ」~京都に住んで京都で働こう~
  黒田正子著 武田ランダムハウスジャパン発行
  定価:1600円

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