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2015年12月20日 (日)

いわゆる「ふるさと納税」について少し考えてみた(その1)

年末を迎えて何かと話題の「ふるさと納税」。正確にいうと、「都道府県・市区町村に対する寄附金のうち、2,000円を超える部分について、一定限度額まで、原則として所得税と合わせて全額が控除されます。」「ふるさと納税ポータルサイト」総務省)。つまり好きな自治体に寄付をして、その分、納税額を減らせる!という仕組みですが、豪華な返礼品ばかりが話題となって、もはや「節税できる通販サイト」状態・・・

というわけで「ふるさと納税」について少し考えてみました。

「ふるさと納税」制度が始まったのは2008年度からで、本来の目的は都市と地方の財政格差を縮小するために導入された制度です。例えば、全国平均を100として、都道府県別に人口1人当たり税収額を比較してみると、上の図のように、地方税収計については、東京都が167.7で最も大きく、最低の沖縄県の64.9と比べると約2.6倍の格差となっています。

また、「平成25年度 市町村別決算状況調」によると、市区町村では最大の北海道泊村(149.8万円)と福島県浪江町(2.0万円)では、なんと74.9倍の差となっています。北海道唯一の原発の立地する泊村と、原発誘致に失敗し、東日本大震災とそれによる福島第一原発事故で壊滅的な被害を受けた浪江町の対照的な数字に驚かされます。

ちなみに2位は群馬県上野村(145.9万円)。日航ジャンボ機墜落事故の現場となった「御巣鷹の尾根」がある村ですが、水力発電所などで巨額の固定資産税収入があるということです。

参考: 岡本真也(2010)「市町村の財政運営(1) ─市町村税の税収格差」『ファイナンス』、財務省 https://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/f01_2010_07.pdf

とはいえ、実際には自治体間の財政力格差を是正するために地方交付税などの制度もあるので、慶応大学の土居先生にならって、最新のデータでグラフを作りなおしてみたのが下の図です。

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(出所)「平成25年度都道府県決算状況調」(総務省)「平成25年住民基本台帳に基づく人口、人口動態、及び世帯数調査」(総務省)をもとに作成。
(注)図中の数字は「地方税」「地方譲与税」「地方交付税等(地方交付税+地方特例交付金)」の合計額の人口1人当り額について、全国平均を100とした時の値である。

島根県、すごいですね。何かと話題の沖縄県の振興予算といわれるもの、実はそれほどのものでは無い、と翁長知事がおっしゃるのもわかります。

さて、こうした自治体間の財政力格差をなくそう、と始まったふるさと納税は、都市部に住む住民が住民税の一部を自分の出身地などの自治体に振り替える仕組み、と言えます(実際には納税では無く、自治体への寄付ですが)。

地方で生まれ、育ち、その町で教育を受けた子供が、高校や大学を終えて都会に移り住み、そこで働き、納税する、ということは、経済学的に考えれば、自治体によって提供された「教育」という公共サービスの便益が「漏れ出している」と見ることができます。そこで、若いときに費用を負担した地方にいくらか還元しよう、というのが「ふるさと納税」の基本的な考え方です。

実際には、「税の振り替え先=寄付先」の地方を出身地だけに限定せず、また寄付額は税額の1割が上限となっています。さらに、当初は自分の居住している自治体の住民税の一部をそのまま振り替える制度が想定されていましたが、最終的には寄付金控除制度を拡充することとなり、現在に至っています。

 

表:「ふるさと納税」の推移
人数(人)寄付額(億円)控除額(億円)
2008年 33,149 73 19
2009年 33,104 66 18
2010年 33,458 67 20
2011年 74,677 649 210
2012年 106,466 130 45
2013年 133,928 142 61

「ふるさと納税」が始まって以来の実績をまとめたものが上の表です。制度が導入された2008年は寄付金額も73億円と少なかったのですが、東日本大震災が起こった2011年には649億円に急増しています。

2013年の寄付総額は142億円で、これは個人住民税の約0.09%に相当する額です。2011年を別にしても、寄付額、寄付者ともに増加傾向にあり、近年では返礼品の豪華さもあって、広く浸透しつつあると言われています。

しかし、多額の寄付を集める自治体がある一方で、ほとんど寄付を集められない自治体も多く、いつの間にか返礼品の豪華さばかりがクローズアップされるようになってしまった感も否めません。

さて、「ふるさと納税」はどこに向かうのか?続きは次回に・・・。

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