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2013年3月 6日 (水)

アユモドキと、スタジアムと

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私の住む亀岡市を流れる保津川(の支流)には、国の天然記念物である「アユモドキ」という魚が生息しています。かつてはこの辺りではごく普通に見られた魚でしたが、岡山平野を流れる吉井川や旭川、琵琶湖淀川水系にしかそもそも生息しておらず、現在は岡山市内と亀岡市内でしか繁殖が確認されていません。つまり、琵琶湖淀川水系では唯一の生息地。また、岡山では自然繁殖している場所がなくなり、市民のみなさんの必死の努力でなんとか休耕田を活用して繁殖ができるように守られていますが、それも危機的状況です。

環境省のレッドデータブックでは、アユモドキはながらく「絶滅危惧種IA類:」に分類されています。つまり「ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの」ということです。そのアユモドキが自然に繁殖している、地球上で最後の場所が亀岡の川なのです。

今、京都府が進める大型スポーツスタジアムの建設計画が持ち上がり、このアユモドキが生息する川のすぐそばが最終候補地となりました。地域振興と希少種保全、私なりに考えをまとめてみました。

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その前に、アユモドキとはなんぞや?ということから。鮎に似ている(特に上から見たら区別がつかないくらいです!)から「アユモドキ」ですが、実は口ひげがあることから分かるように、ドジョウの仲間。であるにも関わらず,体高のある体形と大きく二叉した尾びれが特徴です。この仲間はユーラシア大陸に広く分布しています。が、アユモドキは唯一日本に分布する種としてとても重要な種です。そして分布は先ほども書いたように極めて限られていて、 かつ生息地数・生息個体数とも減少が著しいことから、1977年に淡水魚保護協会の申請により国の天然記念物に指定されました。

琵琶湖淀川水系ではかつて内湖や淀川のワンドでも生息が確認されていましたが、現在では亀岡市域のたった1ヶ所でしか繁殖が確認されていません(生息自体は保津川流域の他の場所でも確認されています)。

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この地域では、地域住民や行政、NPOのみなさんが熱心な保護活動を展開してこられました。実は繁殖地は灌漑のための風船ダム(ファブリダム)の上流に限られており、ダムを膨らませて川をせき止め、水位を上昇させたときに、アユモドキはそれを洪水(=雨季)と勘違いして、ダムの上流側にできた一時的水域で産卵するそうです。ちなみにアユモドキの産卵は、その一時的水域がつくられたあと1~2日間に限られるそうです

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さて、スタジアム問題。昨日(3月5日)、日本魚類学会が計画の白紙撤回を求めて要望書を提出へ、というニュースがYahoo!のヘッドラインでも流れて、数多くリツイートされたり、facebookでもシェアされています。

以前にも書いたことがありますが、この厳しい財政状況の折、果たして公費を投入してスタジアムを作ることが本当に必要かどうか、は甚だ疑問です。

ただ、地域にスポーツ文化が本当に根付いていて、市民のみなさんの寄附などでも作ろう!というのなら、それはそれで構わないと思います。欧州を見れば、10万人規模の町でプロチームがあって、2~3万人入るスタジアムがあるのも珍しくはありません。が、相応の歴史と言うものがそれぞれの町のクラブにはあります。それはビッグクラブも、小さなクラブも同じです。候補地として最有力とみられていた城陽市のように、まずは地道に地元のチームと言う意識や文化を長い目で育てることが先にあってこそのホームタウンだと思います。が、これまで亀岡はサンガのホームタウンにすら入っていなかったわけです。つまり「話の順序が逆」。

ちなみに、もし、このような亀岡でスポーツ施設を誘致できる「物語」を持つスポーツ文化があるならば、それはラグビーだと思います。亀岡高校のラグビー部は、今はちょっと低迷していますが、歴史も実績もありますし、今でも子供たちのタグラグビーやラグビースクールも盛んです。たとえば2019年にラグビーW杯が日本で開催されますが、海外からのチームの合宿地に名乗りを上げて、あらためてラグビーを通じてスポーツ文化と言うものをこの町に根付かせることも出来るのではないか、と思います。そして、それを提案したこともありますが、残念ながらあまり関心を持ってもらえず(苦笑)

次にアユモドキの件。まだまだ不明な点が多いのが現状です。サンクチュアリの確保も掲げられてはいますが、生息地の保全は、スタジアム建設とは関係ない喫緊の課題です。スタジアムの議論とこれが絡めて話されることがまずおかしいわけで。その上、生態史に不明なこともたくさんあれば、スタジアム建設が水田や河川、あるいは地下水と言った環境におよぼす影響も未知数です。日本魚類学会の要望書についてのニュースによると、市が計画している共生ゾーンの効果は「市の希望的な目標に過ぎない」と要望書で批判している、とのことでした。保護に向けて学術的にも技術的にも未解明な部分が多過ぎるのに、建設を前提に保護計画をこれから策定、というのも「話の順序が逆」。

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また、現実に米価が低すぎて、このままでは耕作放棄地が増大するばかり、というのは確かにその通りで、早急に対策が必要なのはいうまでもありません。ただ、コウノトリの野生復帰に取り組む兵庫県豊岡市の「こうのとり米」や、滋賀県の琵琶湖周辺の「魚のゆりかご米」など、実際に日本各地、それもすぐ近くにさまざまな工夫をこらして、農業を産業として育て、成立させている地域がいくつもあります。つまり、アユモドキを保護する技術的な面でも不明な点が多い上に、すぐ出来る対策としての農地(=生息地)保全にまだまだ工夫の余地がいっぱいある中で、建設有りきの議論が進むのは、これもまた、「話の順序が逆」。

そして亀岡市の財政はもう火の車目前です。いわゆる市の貯金である「財政調整基金」も底が見えてきました。そういう中で周辺整備に巨額の資金を投入する、ということは起債せざるをえないわけですが、私たちの子供たちの世代にツケを回すことにほかならないわけです。確かに誘致を求める多数の市民の署名が集まりましたが、メリットだけではなくデメリットもきちんと説明し、理解を得た上での署名かどうか、と甚だ疑問です。人口減少が続く、オールド・ニュータウンを抱える町として、人口減少に歯止めをかけていくためには、さまざまな政策を総動員していく必要がありますが、すべてをやり切ったかというと、そんなことは無いはずです。やっぱり「話の順序が逆」。

もちろん、地域の抱える切実な課題も十分に理解していますし、推進される方々のお考えにも傾聴すべき点は多々あります。だからこそ、市民的な議論の積み重ねが必要なはずです。

ですので、繰り返しますが、今、「この場所」に建設すること、そしてこのような「議論の進め方のまま」では、私は反対です。アユモドキにとっても、切実な課題を抱える地元のみなさんにとっても、そして未来をになう亀岡の子供達にとって悔いのない選択を、と切に願います。

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コメント

本題と趣旨がずれるかもしれませんが、西京極でも集客が結構大変だと思うのですが、亀岡にスタジアムを作ったところで却って行き難くなる人が多いのではないかと思います。
亀岡駅まで京都駅から快速で20分で便利だと云ったって、観客の家は京都駅ではありませんからね。

投稿: ごしゅりん | 2013年3月 8日 (金) 22時50分

この問題のもう一つの課題は、候補地がいわゆる霞堤とつながる洪水の氾濫原であることです。洪水が氾濫しスタジアムが水没する危険、スタジアムで造成することで他の地域に洪水の氾濫を及ぼす危険、特に下流は市街地が密集する京都市です。かつて亀岡地域の洪水被害を防止するため200戸以上の人家が移転し、先祖代々の土地が水没して、上流に日吉ダムができました。桂川の治水対策はこうした上流と下流がお互いの立場にたち、協力しあって成り立ってきているのです。亀岡さえよければいいそんな発想は自然の大きなしっぺ返しが必ずあります。この意味でも自然のバランスを破壊するものでしかありません。

投稿: TM | 2013年3月 9日 (土) 23時22分

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